「社会貢献と経済学」の授業でフィールド調査を実施

経済学部では、新カリキュラムで刷新された「社会貢献と経済学」の授業の一環として、5月10日にフィールド調査を実施しました。同授業は、SDGsの実現力を修得するための”S-Cube” (Soka Sustainable Society)プログラムとも連携しており、S-Cubeプログラムに属する学生たちも参加しました。
1ヶ所目は、千葉市緑区にある千葉エコ・エネルギー株式会社の営農型太陽光発電設備を視察しました。こちらでは、馬上代表取締役、広報の桝井さんに温かく迎えていただき、設備の前で、学生たちは丁寧な説明を受けました。広大な敷地に建つ千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機は2018年3月に竣工し、以来、固定価格買取制度(FIT)を活用して売電すると同時に、農地では、さつまいも、ブルーベリー、里芋などを育てているとのこと。小雨が降る中でしたが、学生たちは太陽光パネルの下で、さつまいもの苗の植え付け作業を行い、農作業の大変さと、共同作業の楽しさも実感しました。
また、別の営農型太陽光発電設備では、清水建設株式会社、千葉エコ・エネルギー株式会社、株式会社つなぐファームの三社で共同運営をしているとのこと。清水建設が発電事業、つなぐファームが農業を、千葉エコが発電事業の管理運営を行うというスキームとの説明を受けました。また、その対面には千葉商科大学の営農型太陽光発電設備があり、発電した電力をオフサイトコーポレートPPAの契約に基づいて購入し、千葉商科大学が目指す「自然エネルギー100%大学」に貢献しているとの仕組みも視察しました。こちらも、農業は、つなぐファームが担っているとのことでした。
つなぐファームの取締役である富岡さんは、以前は、今とは異なる専門分野で仕事をしていたが、日本が直面する気候変動対策や農業の問題(特に若手の就農者が激減している課題)を何とかしなければならないと思い、30代で転職したという経緯などを含め、本事業の意義を教えてくださいました。馬上代表は、千葉エコでは事業が成功しているものの、営農型太陽光発電設備が、地元地域では増えていないという課題や、農業という分野は、単に作物を栽培するのみではなく、研究をしながら最新技術を試し、挑戦し続ける仕事であることなどの魅力も語ってくださいました。

農業従事者の方から、食料を作る責任、挑戦する楽しさを含めて、営農型太陽光発電設備の説明を受ける学生たち





その後、学生たちは三浦半島に移動し、訪問場所の2ヶ所目は、たのし屋本舗を経営されている下澤さんが契約している高台にある農園を視察しました。ここでは、三浦半島野菜である「レインボー大根」、「キャベツ」などを低農薬で栽培しているとのこと。また、海からのミネラルを含んだ潮風や、富士山が噴火した際に運ばれた火山灰が、野菜を美味しくしてくれるとの自然の恵についての話もありました。
その後、下澤さんが経営されるレストランに移動し、グループごとに1日の学びの振り返りをした後、採れたての大根が入ったサラダ、三浦半島の港から買い付けたお刺身、未利用魚などが入ったカレーなどを美味しく頂きました。
最後に、下澤さんからは、「事業を始める時や拡大する際は、政府からの補助金を大いに活用したが、それは税金なので大事に使って事業を絶対に成功させること、成功して地域の人や、お店で働く人の笑顔を増やすことを常に思い、頑張ってきました。皆さんにも三浦半島の良さを感じてもらい、皆さんの学びや、これからの仕事に活かしてください」との激励をいただき、この日のフィールド調査を終了しました。
参加した学生からのフィードバックと感想は、以下の通りです(一部抜粋)。
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「地域創生」や「再エネ」という言葉を抽象的に捉えていたが、フィールド調査を通じて、具体的な「人、土地、活動」に触れることで、その意味が深く理解できた。「地域で生きる選択肢」の豊かさや、力強さを体感でき、将来の進路や自分の価値観にも影響を与える経験となった。
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調査前は、太陽光パネル設備の効率性やコスト面ばかりが課題と考えていたが、実際には「地域の理解」や「法規制への対応」、「農業者との信頼関係づくり」と言った、人の要素が成功の鍵であると分かった。
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現地訪問して最も印象に残ったのは、営農型太陽光発電が単なるエネルギー供給手段ではなく、「農業の再生」や「地域の未来づくり」に直結している取り組みであるということでした。
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地域密着型の営農と発電の両立は、これからの農業の新しい価値を創る可能性があると感じた。若者がワクワクする農業の未来を発信していくことが、地域の持続可能可能性にとっても重要だと感じた。
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営農型の太陽光は、農業に悪い影響を与えているのではと考えていたが、パネルの遮光率なども十分に検討し、パネルを綺麗に配置していることに驚いた。また、その遮光率を変えることで、育てる野菜の種類を工夫していることが、素晴らしいと思った。
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農業界の危機を、前よりも自分ごととして捉えるようになった。また、農業従事者の尊さを感じました。
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営農型太陽光発電が、「エネルギーの地産地消」と、「地域農業の持続」を両立できる手段になり得るという点が、特に重要と感じた。これまで、太陽光発電と農業は相反するものと思っていたが、実際に稼働している農場を見ることで、技術と地域理解が合わされば、共存できることを実感した。
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農業は、様々なビジネスと連携を取れる時代になっているということを学んだ。
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地域創生については、これまでは、「行政や企業が進めるもの」という印象があったが、今回のフィールド調査を通じ、地域の人々自身が主役となり、持続可能な仕組みを作るという活動を学び、自分の意識が変わった。
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地元野菜を使ったお料理はとても美味しく、少し価格が高くても、地域や国内の食材を積極的に選ぶようにしたいと感じました。
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地域創生においては、外部からの一方的な支援に依存するのではなく、地域の中にいる人々自身が目的を持って動き、必要な制度や資源を取り入れながら、持続可能な仕組みを作っていくことが何より大切だと実感した。特に、地域の人たちが笑顔でいられる環境を、自分たちの手で作ろうとする強い意志と行動力が素晴らしいと感じた。
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農業について知れば知るほど、食材を大切に頂こうという気持ちになりました。また、地元についても、もっと学んでいこうと思いました。
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目の前の食事一つ一つに感謝しながら食べたいと、あらためて感じた。たのし屋本舗さんの夕食では、大根やカボチャを頂いた時、丹精込めて育てられた食材と横須賀の街を想像し、言葉にできない思いが込み上げてきた。貴重な体験の機会を提供していただき、ありがとうございました。

三浦半島の高台で三浦野菜を作っている農地を訪問。海からの潮風を肌で感じながら、下澤さんから説明を受ける学生たち。






