JICA(国際協力機構)の    衣斐友美氏を招いて「社会貢献と経済学」の授業を行いました

 6月12日の3時限に、独立行政法人国際協力機構(JICA)人間開発部 保健第一グループ長の衣斐友美氏をお招きして、社会貢献と経済学(S-Cubeプログラムの必須科目)の授業が行われました。「開発途上国の貧困~母子保健の視点から~」のテーマのもと、ご自身のラオス駐在の体験とともにご講演いただきました。

 はじめに、母子保健の現状をデータをもとに話され、世界的に改善傾向であることが紹介されました。次にラオスの概況を述べられた後、ラオスにおいてもここ20年間で母子保健の状況が大きく改善されたことを報告されました。しかしながら、妊産婦や子どもの死亡率については、SDGsで示された目標値には達していないことも述べられました。

 またラオスにおける、「経済的」「物理的」「社会慣習的」といった3つの観点から保健サービスへのアクセスを改善するJICAの母子保健の取組みを紹介されました。それとともにラオス国内での保健人材の育成についても言及されました。講演の最後には、新たな課題として、財政難によって医療費負担が増加していることや、生活習慣病などの非感染性の疾病がラオス国内で増えている現状を鑑み、予防対策や治療体制が大幅に不足していることを話され、講演は終了しました。講演のあと、各グループごとにディスカッションに移り、そこには衣斐氏も入るなど活発に行われ、授業は終了しました。

 履修した学生からは、以下の所感が寄せられました。

  • 本日の講義を通じて、途上国の貧困撲滅と母子保健の向上が、密接に関連していることを実感しました。JICAの多角的な取り組みによって、単なる支援ではなく、持続可能な発展に向けた戦略が進められている点が素晴らしいと感じました。
  •  「保健サービスへのアクセスの3つの障壁(社会慣習的・経済的・物理的)」という視点が印象的でした。単に病院を建てるだけではなく、人々の認識を変えること、医療費負担の軽減、インフラ整備が一体となって、初めて貧困削減に寄与するという多面的なアプローチの必要性を学んだ。
  • 母子保健の向上は、単なる医療支援ではなく、貧困の連鎖を断ち切る鍵であると改めて認識した。JICAが、長期的視点で人材・制度両面から関わる意義は大きく、今後、自分自身も国際協力の現場で、何ができるかを考えさせられる講義だった。
  •  現地の人々の声を丁寧にすくい取る姿勢が、課題の本質を理解し、持続可能な支援を行うためには欠かせないことを学んだ。
  • 貧困と保健のつながりを、「母子保健」という視点から具体的に学ぶことができ、国際協力の現場に対する理解が深まった。今後、自分の学びや将来のキャリアにおいても、「人間の安全保障」や「持続可能な支援」の視点を大切にしていきたい。
  • JICAの支援は、単なる「援助」にとどまらず、現地の主体性を高めるパートナーシップであることが印象的だった。グローバル課題を自分ごととして考えるきっかけになった。
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