この夏、学生の皆さんに読んでもらいたい、触れてもらいたいもの(推薦作品一覧)2022

Newsで発信している、文学部教職員・文学部生による「この夏、学生の皆さんに読んでもらいたい、触れてもらいたいもの」(2022)の作品をまとめました。

書籍

平林香織教授推薦:『カブキブ!』1~7 榎田ユウリ (角川文庫)
歌舞伎を見たことがある人、歌舞伎が大好きな人、歌舞伎を見たいなと思っている人、歌舞伎には興味がない人、そんな誰もが、この本を楽しめること請け合いです。主人公は高校生。普通の高校に歌舞伎同好会ができて、歌舞伎部に昇格するプロセスがミステリーテイストでテンポよく描かれています。


伊藤貴雄教授推薦:『国家』(上・下) プラトン著 藤沢令夫訳
「民主制」は常に「独裁制」への危険をはらむ――。この衝撃的なテーゼを説くプラトンの筆致は、SNS時代の今日を予言するかのようなリアリティを持っています。あなたはどう読みますか?


伊藤貴雄教授推薦:『永遠平和のために』 カント著 宇都宮芳明訳
「戦争に飽きようともしない国家元首たち」がいる世界で、「永遠平和」はいかにして可能か? 70歳を超えたカントが、自身の哲学の総決算としてこの人類的課題に立ち向かう姿は、それ自体が一個の偉大なドラマです。


伊藤貴雄教授推薦:『イタリア紀行』(上・下) ゲーテ著  鈴木芳子訳
ゲーテは若き日、政治家として活躍しました。しかし公務に忙殺され、人生の目的を見失いそうになります。ある日、大胆にも公務を放り出し、イタリアへ。この大旅行が文豪を誕生させます。彼と共に心の旅をしませんか?


中堀正洋准教授推薦:『スラヴ吸血鬼伝説考』 栗原成郎著 (河出書房新社)
スラヴ文献学の泰斗がフォークロア資料を渉猟し、吸血鬼の起源がスラヴ世界にあることを論究した名著。氏のアカデミズムに裏打ちされた博覧強記ぶりに度肝を抜かれること間違いなし。
 

中堀正洋准教授推薦:『ロシアの歳時記』 ロシア・フォークロアの会なろうど編著 (東洋書店新社)
主にロシア革命前のロシアの民衆文化を紹介したエッセイ集。衣食住といった民衆の伝統的な生活から、口碑伝承、歳時儀礼、音楽、自然など、テーマは多岐にわたる。どこから読んでも楽しめるが、構成どおり、冬・春・夏・秋の順に読めば、ロシア農村の一年の生活サイクルが理解できる好著。


中堀正洋准教授推薦:『ディカーニカ近郷夜話』 ニコライ・ゴーゴリ著、平井肇訳 (岩波文庫)
ロシアの文豪ゴーゴリが、故郷ウクライナの民間伝承を材に書きあげた幻想的な短編小説集。悪魔や魔女、ルサールカ(水の精霊)などの異形が登場し、文句なしに楽しめるお薦めの一冊。青空文庫で無料で読めます。


中堀正洋准教授推薦:「ヴィイ」(『外套・鼻』に所収) ニコライ・ゴーゴリ著、吉川宏人訳 (講談社文芸文庫)
ヴィイはスラヴ世界における冥界の魔物で、その視線(邪視)によって人を殺める。普段はその眼は大きな瞼と睫毛に覆われていて、悪魔たちの助けがなければ持ち上げることはできない。本作では魔女も小悪魔も登場する。小説を読んだあとは、そのタイトルもおどろおどろしい実写版のカルト映画『妖婆 死棺の呪い(原題ヴィイ)』(1967)を見るもよし。ともに秀逸。


蝶名林亮 准教授 推薦 『風立ちぬ・美しい村』 堀辰雄 (岩波文庫)
ジブリの映画作品で再び注目を集めましたが、日本の夏ということで心に湧いてきた作品です。物語(『風立ちぬ』)中盤の美しい夕暮れの風景をめぐる主人公自身の心理描写が印象に残ります。幸福というものを考えさせられる作品です。


熊田岐子 准教授 推薦:『森の生活(ウォールデン)(上)(下)』 H. D. ソロー著 飯田実訳  岩波文庫
アメリカン・ルネサンス期の思想家エマソンを師としたソローの自給自足生活での思索の書。特に、第3章「読書」をお勧めします。


熊田岐子 准教授 推薦:『「ウォールデン」入門講義』 佐藤光重著  金星堂
ソローの著作『ウォールデン』を解説した書籍。とてもわかりやすくまとめられていて、ソローの思想が整理できます。


熊田岐子 准教授 推薦:『サイラス・マーナー』 ジョージ・エリオット著 土井治訳  岩波文庫
絶望の淵に落ちたサイラスのもとにやってきたエピーとの心温まる物語。イギリス発の「大人のためのおとぎ話」として紹介されています。


熊田岐子 准教授 推薦:『ふしぎの国のアリス Alice’s Adventures in Wonderland【講談社英語文庫】』 Lewis Carroll著  講談社インターナショナル
言わずと知れたアリスの物語。英語原文で触れてみると新たな発見が見つかります。この夏は英語で読了してみませんか。


学生Y. F.さん推薦:『今日の宗教の諸相』 チャールズ・テイラー著 伊藤邦武・佐々木崇・三宅岳史 訳
ウィリアム・ジェイムズの『宗教的経験の諸相』を参照し、宗教が個人レベルだけでなく、共同体、国家レベルで相互に関わり合い作用変容を繰り返してきた歴史を紐解いていく一冊。


学生Y. F.さん推薦:『失楽園(上・下)』 ミルトン著 平井正穂訳
神から自立し己の理性で世界に立ち向かう人間の姿を神、サタン、人間 三つ巴の関係から描き出す大長編叙事詩。サタンとミカエルが衝突するシーンは圧巻。


学生Y. F.さん推薦:『責任と判断』 ハンナ・アーレント 中山元訳
汎用な悪とは自らの思考や判断を停止し他律に盲従することによって生まれる陳腐な悪であるとアーレントは言う。自らの思考で物事を吟味する自律の大切さを教えてくれた良書です。


学生Y. F.さん推薦:『エディット・シュタインの道程 真理への献身』  須沢かおり著
現象学とスコラ学を融合させたエーディト・シュタイン。彼女は激動の時代にユダヤ人キリスト者として信仰を貫きアウシュヴィッツにて殉教しました。人生を賭した彼女の真理への献身の道程を鮮明に描いています。


文学部3年K.M.さん推薦:『黒田如水』 吉川英治 角川書店
主人公はとにかく働いています。大きな構想を実現するために働いています。臆病な人間の裏切りにあっても、奮起する主人公の振る舞いに励まされます。酒の中に真実があることもよくわかる一書です。お勧めです。


文学部3年K.M.さん推薦:『英米文学史講座 第6巻』 福原麟太郎・西川正身監修  研究社
今日の英語に親しむためにも18世紀の英文学は役立ちます。本書で紹介のある作家のうち、一人の著作に触れられると、次に波及して、だんだんと自分の英語が板についてきます。英語に慣れてから他の言語にも進みます。


文学部3年K.M.さん推薦:『権威の概念』 アレクサンドル・コジェーヴ 今村真介訳  法政大学出版局
論理的にはわかりやすく書かれていますが、決して読みやすくはありません。本文と付録を合わせて150頁程度なので、もう一度読むのは楽だと思います。1942年に書かれていて、読んでいて驚く箇所があります。

映像作品

平林香織教授推薦:『魂のまなざし』 アンティ・ヨキネン (映画)
フィンランドの国民的画家ヘレン・シャルフベックの生誕160年を記念して製作された映画です。フィンランドの美しい風景とフィンランド語のどこか懐かしい響き。そんな画面に映し出される魂を描く凜とした姿。見終わったあと背筋をピンと伸ばして深呼吸をしたくなるような佳作です。


森下達 講師 推薦:『世界サブカルチャー史 欲望の系譜』シリーズ
NHK-BSで放映されたドキュメンタリー。アメリカにおける、1950年代から2010年代までのサブカルチャーの変遷を、政治や経済、社会の動きと関連づけて読み解いていきます。現代史への入門としてもわかりやすく、再放送をしているうちに見ておくと、今後役に立つでしょう。


森下達 講師 推薦:『嵐が丘』 ウィリアム・ワイラー監督 (映画1939年)
風に揺れるヒース、陽光の中そびえる岩肌、稲光によって浮かび上がる顔……。昔の映画を観ると、風景を切り取ることそれ自体が物語上の情感を醸し出す表現なのだと、改めて納得させられます。原作を大きく変えたラストは賛否わかれるでしょうが、ある種のハッピーエンドとして美しいことは間違いありません。


学生Y. F.さん推薦:『ダークナイト』(映画) クリストファー・ノーラン監督・脚本
ゴッサムシティのヒーロー、バットマンの前に現れたのは口裂け男ジョーカー。彼は人のモラル、道徳心、善性をバッドジョークと笑い飛ばす。『俺たちゃコインの表裏の関係なんだ。』人の善性と悪性の極限を描ききった傑作。


学生Y. F.さん推薦:『TENET』(映画) クリストファー・ノーラン監督・脚本
過去の世界へと時を逆行する事が可能となった世界。 それは未来から己が逆行、ひいては己の死体と出会う可能性が実在する世界である。そんな決定論的世界の中で自由は存在するのか?摩訶不思議な映像からノーラン哲学が垣間見える。
 

音楽

伊藤貴雄教授推薦:『フィデリオ』 ベートーヴェン作曲 (オペラ)
政治犯として囚われた夫を助けようと、妻が男装して牢獄に潜入します。フランス革命期の実話を元にした脚本に、ベートーヴェンが作曲。自由とは?解放とは?愛とは?正義とは? まさに「鳴り響く思想」です。
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