蝶名林俊 准教授

SDGs達成に経済学で挑む!

 私の専門は環境・開発経済学です。特に、ビッグデータや計量経済的な分析手法を用いて、開発途上国や先進国において気候変動がどのような経済的な影響を与えるかを測定する研究を行っています。気候変動の経済的な影響や被害を知ることは、最適な適応・緩和政策を策定していくために役立ちます。

 私の担当する「気候変動の経済学」という授業では、経済学の概念や理論および他の分野からの知見に基づいて、経済学者が気候変動にどのようにアプローチするかを学びます。

 また、私が担当するゼミ(演習I・II・III・Ⅳ・卒業論文研究)では、学生はデータ分析や統計学・計量経済学的な分析手法を習得しながら、主にSDGsに関連する環境や開発の分野で興味のあるトピックについて研究プロジェクトを行い、研究成果を学内外で発表します。また、ゼミで得た知識を実際の職務経験を通して実践するために、国内外の国際機関、大学研究機関、企業などでインターンシップをすることを推奨しています。

 ゼミを通して得られる知識やスキルや経験は、国連や世銀などの国際機関、国内外の大学院、民間セクターなどの様々なキャリアを目指す学生に役立ちます。

 

「Think globally, act locally.」の中高・大学時代

 中学・高校では美化委員会に所属し、委員長を務めました。校内でのごみの分別の実施を提案、導入した際、実際に分別が行われるようになるまで時間がかかり、生徒からの協力を得ることの難しさを痛感しました。時には放課後に、用務員の方々と一緒にごみ収集所で分別されていないごみを分別することもありました。

 分別は地味な作業ですが、様々な環境問題の改善につながる大切な取り組みです。この活動を通して、人があまり意識していないけれども重要な問題に関心を持ち、行動を起こしていくことの必要性を学びました。

 その後、2003年に創価大学に進学し、大学で受けた環境経済学の授業に感銘を受けました。高校時代から関心を持っていた気候変動という人類が直面する地球的問題群の解決に対して、私の好きな経済学の視点からアプローチすることができることに感銘を受けました。大学院でさらに専門的に学びたいと考えるようになり、その頃からアメリカの大学院への進学を志望するよりになりました。

 学生時代は、様々な学生団体の活動にも積極的に参加しました。まず創価大学国際連合研究会では、様々な環境問題について調べたり、ニューヨーク・ボストン研修に参加したりしました。研修では、ハーバード大学で学ぶ創価大学卒業生に直接お話をお伺いし、海外の大学院への進学をさらに真剣に考えるようになりました。研修中に実現したチョウドリ元国連事務次長との懇談会では、世界の第一人者たちが池田先生を高く評価し、創価教育に大きな期待を寄せていることを肌で感じるとともに、国際社会で活躍できる実力を身につけようとさらに深く決意しました。

 また、インターカレッジの学生団体である、日本国際連合学生連盟の理事としても活動し、国際会議に参加したり、国際問題を討議するセミナーを開催したりしました。このように、学内外で積極的に行動する中で、自身の進路を模索すると共に、国際問題を解決するために世界ではどのような議論がされているのかを、実体験を通して学んでいきました。

何のため、誰のための研究か

 創価大学卒業後は、アメリカのイェール大学とコーネル大学でそれぞれ修士号と博士号を取得しました。また、世界銀行やイェール大学で勤務し、開発途上国や先進国における気候変動などの環境問題や開発事業の影響評価に関して、研究、助言、技術支援等に従事しました。
 私が環境経済学や開発経済学に興味を持ち始めた大きなきっかけの一つに、本学の創立者である池田大作先生が提唱された「人間主義経済学」という考え方があります。創立者は、創価大学の将来構想の一つとして、次のように提案されています。「人間主義経済の研究、すなわち資本主義、社会主義を止揚する、人類の新しい経済のあり方について、理論的・実践的な研究もしていったらどうかと思う。」(「創価大学設立構想」1969年5月3日)。これは、利益を最大限にする経済学ではなく、「人間のため」「未来のため」を考え、持続可能な発展を可能にするメカニズムを追求することであると考えることもできます。

 例えば、2021年まで私は国際機関である世界銀行にエコノミストとして勤務していましたが、当時行った研究の一つに、気候変動に対するレジリエンス(弾力性、回復力)の世帯単位での測定があります。この研究では、国や地域ではなく、世帯ごとのデータをとって分析を進めます。なぜなら、たとえ小さなハリケーンでも、貧困家庭は洪水で家ごと流されてしまうことがあるなど、被害の大きさに、家庭の経済状況が深く関わってくるためです。

 「気候変動によって、こんなに大変なことが起こる」との予測をする場合、「誰の視点に立つのか」、「その基準をどこに置くのか」によって、分析の仕方は大きく変わってきます。当然、労力や時間はかかりますが、「誰のため」「何のため」の研究かを問い続ける日々です。

4. 創価大学で共に成長し、世界を舞台に社会貢献を!

 創価大学経済学部での学びには無限の可能性が拡がっています。私自身、在学時に身に着けた学力や語学力はもちろんですが、異文化理解力、チームワーク力、忍耐力などの「人間力」が、世界銀行やイェール大学で勤務した際に非常に役に立ったことを痛感しています。創価大学という最高の環境で、社会に貢献するための実力を共々に磨いていきましょう!

 また、皆さんが活躍する舞台は世界に広がっています。気候変動や貧困などの地球的問題群は、人類にとって喫緊の課題であり、経済学を含め様々な学問分野からのアプローチが必要とされています。人間主義経済学を掲げる経済学部で、持続可能な未来をどのように拓いていけばよいかを共に学び、研究し、行動を起こしていきましょう。

参考リンク・文献




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