課題研究

テーマ:デューイと「人間の尊厳」
~カント生誕300年を記念して~

日時: 2024年9月29日(日)13:00-15:30
会場: 創価大学・中央教育棟4階 AW404教室

趣意:
デューイ(1859-1952)とカント(1724-1804)。かたやアメリカ・プラグマティズムの集大成者、かたやドイツ理想主義の創始者とされ、二人の哲学は全く対極に位置するように見える。デューイが『ドイツ哲学と政治』において厳しいカント哲学批判を行なったことから、この印象は一層強められる。現にリチャード・ローティはデューイの哲学を評価して「われわれをプラトンとイマヌエル・カントの呪縛から解放した」(『リベラル・ユートピアという希望』須藤訓仁・渡辺啓真訳、岩波書店)と述べている。

だが二人の関係はそう簡単に片づけられるものではない。もともとデューイの学位論文の題目は「カントの心理学」であったし、その後もカント関連の論文を著している。若き日におけるカント哲学との対決なくしては、デューイ哲学の形成もなかったと言って過言ではない。カント生誕300周年に当たる今年、改めて両者の関係を捉え直したい。

ここでキーワードとしたいのは「人間の尊厳」である。この概念はカント倫理学の枢要と言えるが、デューイ倫理学のうちにその反響を通奏低音のごとく聴き取ることはけっして不可能ではない。ただし本課題研究では、単に文献学的・哲学史的方法のみならず、応用倫理学的・教育実践的方法をも念頭に置いたアプローチを試みる。

生澤繁樹氏は、カント所縁の用語である「公共」「人権」「世界市民」等について、デューイ哲学の観点から照射する。伊藤貴雄氏は、デューイのカント批判に対して、カント哲学側からの応答の可能性、また「尊厳」概念の探究の在り方を考察する。藤井基貴氏と鵜飼峻二氏は「尊厳」概念を扱った公民科等の教材を取り上げ、デューイやカントの議論に即しつつ、その教育実践の可能性と課題について提案する。

提題者:生澤繁樹(名古屋大学准教授)
伊藤貴雄(創価大学教授)
藤井基貴(静岡大学准教授)
鵜飼峻二(静岡大学学術研究員)
司会:   牛田伸一(創価大学教授)

※本課題研究は、科研費学術変革領域研究(A)「尊厳学の確立:尊厳概念に基づく社会統合の学際的パラダイムの構築に向けて」/科研費基盤研究(B)「昭和戦前における新カント派価値哲学の展開・意義・特色」の協力を得る予定である。