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2015年03月08日

JICAの要請で本学教員がネパールの民法制定のアドバイザリー・グループの一員として参加

 ネパール最高裁判所から市内の景色
ネパール最高裁判所から市内の景色
3月2日(月)から8日(日)まで、ネパール連邦民主共和国の司法省が国会議員に対して民法制定に向けた会議を開催し、本学法学部の南方暁教授がアドバイザリー・グループの一員として出席しました。
この会議は、独立行政法人国際協力機構(JICA)が行ってきたネパールにおける立法支援と関係するもので、議会に民法草案が上程される前に、司法省が国会議員への情報提供と意見交換をする目的で開催されました。南方教授は、JICAから家族法の専門家としてアドバイザリー・グループへの参加を要請されて、この間、草案の検討作業にかかわってきました。
ネパールは10年に及ぶ内戦を経て、政府と共産党毛沢東主義派(マオイスト)との間で包括的和平合意がなされ、2007年1月に暫定憲法が公布、2008年5月には政憲議会が発足し、王制が廃止され、ネパールは連邦民主共和国へと移行しました。
 ネパール最高裁判所から市内の風景
ネパール最高裁判所から市内の風景
ネパールの民主的な国づくりを軌道に乗せ、平和裡に推進するため、ネパール最高裁判所は司法分野の改革に関する第2次5ヵ年計画に基づく取り組みを開始。しかし、法の不備による課題が山積しており、新たな紛争要因となりかねないとの指摘が起こるなど、民事・刑事上の手続きに関する改革が不可欠となりました。日本政府は2009年度より民法草案に向けた支援を開始し、松尾弘慶応大学教授が率いるアドバイザリ-・グループがネパール政府の作成する草案(法案)に対してアドバイスをし、草案作成の作業を支援してきました。
南方教授は「ここ約5年の間、おおむね年2回、現地で、また日本で、ネパール政府が作成した民法草案を一条一条検討するため、1回につき1週間程度缶詰になって、また月に1回くらいのペースでテレビ会議を行ってきました。私が関わる前から、JICAによって立法支援の作業は進められていましたが、私たちはネパール政府が作成した草案に対して現地の慣習を踏まえながらグローバル・スタンダードの視点も入れて助言をしてきました。今回、議員との意見交換会も何とか順調に進み、草案は今年の夏には国会に提出される予定のようです。まずは、国会に無事提出され、制定されることを見守りたいと思います。今回のプロジェクトに参加したことは、研究者としても大変に興味深いものでした。日本の法律がよく出来ていると見直す機会になりましたし、法に対する考え方の違いにも直面しました。ネパールの高地や低地に現地視察も行いましたが、経済、商業、宗教、文化の面でずいぶん異なり、地域ごとのルールが強いことも分かりました。近代国家となるためには統一法は必要ですが、法律を作っても地域で機能しているルールが支配することはしばらくは続くかもしれません。ただ、法律には啓蒙機能がありますので、まずは法律が制定されるその事自体に大きな意味があると考えています。ネパールに何度も足を運ぶ中で、日本のおもてなしをはるかにしのぐ“おもてなしの精神”がネパールにあることや、子どもたちが素朴な遊びに興じる姿に心が温かくなりました。あいさつに非常に時間をかける“ごあいさつ文化”には、さすがにまいりましたが、それも文化ですね。昨年からはラオスの立法支援のアドバイザリー・グループの一員として関わっています。現地の文化や慣習にも配慮しながら、ネパールでの経験を活かしてしっかりと取り組んでいきたいと思っています」と話しました。
ページ公開日:2015年03月08日