研究所概要
所長からのあいさつ
「法科大学院要件事実教育研究所長 田村伸子からのあいさつを掲載しております。要件事実の意味、当研究所の紹介と所長としての決意などが述べられています。」
民事裁判においては、ある法律効果の発生を主張するには、法律の要件に該当する具体的事実を主張しなければなりませんが、その具体的事実をある法律効果発生の要件事実といいます。この要件事実についての教育については、従前は司法試験合格後に入所する司法研修所において行われていましたが、法科大学院制度の発足に伴い、「理論と実務の架橋」として、要件事実教育が法科大学院でも行われることになりました。その教育の重要性に鑑み、当研究所は、文部科学省2004年度「法科大学院等専門職大学形成支援プログラム」の一つとして、本学が申請した「法科大学院における要件事実教育の充実と発展」を目的とするプログラムが採択されて、その中核を担う機関として、2004年10月に設立されました。
文部科学省の上記支援が終了した後も、当研究所は、本学の支援のもと、シンポジウム、講演会、研究会などを開催して、現在まで活発な活動を展開しています。
2004年度は、2005年3月12日に、シンポジウム「要件事実教育の在り方―法科大学院3年間の教育を通じて―」を開催したのを皮切りに、2005年度は講演会「法科大学院における民法・民事訴訟法教育のあり方」を、2006年度はシンポジウム「法科大学院における民法教育と要件事実教育の連携のあり方」を開催しました。
2007年度以降は、要件事実が問題となる各分野についての研究会を年1回開催しています。2007年度は「消費者法要件事実研究会」を、2008年度は「環境法要件事実研究会」を、2009年度は「『民法改正と要件事実』研究会」を、2010年度は「租税法要件事実研究会」を、2011年度は「要件事実の機能と事案の解明・研究会」を、2012年度は「家事事件要件事実研究会」を、2013年度は「不動産法と要件事実・研究会」を、2014年度は「商事法要件事実研究会」、2015年度は「知的財産法要件事実研究会」を開催しました。
さらに、2016年度からは講演会を年1回開催しています。2016年度は「債権法改正法案と要件事実・講演会」、2017年度は「基礎法学と要件事実・講演会」、2018年度は「医療訴訟と要件事実・講演会」、2019年度は「憲法と要件事実・講演会」、2020年度は「保険法と要件事実・講演会」2021年度は「行政法と要件事実・講演会」を開催しました。2022年度は近年の消費者法改正を踏まえ「消費者法と要件事実・講演会」の開催を予定しています。
当研究所は、シンポジウム、講演会、研究会ばかりでなく、「法科大学院要件事実研究所報」を2005年3月12日に創刊し、毎年所報を発行しています。
所報第6号からは、主として毎年行われる研究会の成果を掲載し、第20号まで発行しています。所報の巻末には、要件事実論・事実認定論関連文献目録を掲載して、要件事実論と事実認定論に関心のある方の便宜を計っています。
要件事実は、民事裁判ばかりでなく、民事紛争解決全般に亘っての重要なツールとなるものであり、その重要性に鑑み、各分野における要件事実の研究を深めなければなりませんし、さらには、法科大学院における要件事実教育のより一層の充実に努めなければならないと考えています。今後も、毎年研究会等を開催するとともに、要件事実に関する文献・論文などについて継続的に収集を行って、我国の法科大学院における要件事実教育の充実と発展に寄与して参りたいと思います。
なお、本年度も、当研究所の顧問の伊藤滋夫名誉教授と前所長の島田新一郎法務研究科長の助言と協力を仰ぎながら、当研究所をさらに発展させて行く所存でございます。