毎年、桜の頃に思い出す記憶を一つ。数十年前、故郷の高校を卒業し上京した筆者は、思いがけなくも入学式の数日前に創立者にお目にかかる機会がありました。創立者と一緒に海外からの来賓をブロンズ像の前でお出迎えする機会に恵まれたのです。その後、その場に集った学生にと、当時の学内にあった「喫茶ロンドン」の豚汁定食の食券を頂いたのでした。経済的な理由で一度は進学を断念し、入学式に両親が参加する余裕さえなかった新入生にとって、その食券は余りにもありがたく使うことは出来ませんでした。そしてせめてもの記念にと、実家の母に手紙を添えて送ったのです。今、生涯の宝として手元に残るその食券を見る度に、自らの初心と原点を確認しています。今年もまた、万朶（ばんだ）の桜が新入生を迎えます。