ブランディング戦略

①大学の将来ビジョン、本事業の独自色の位置づけ、周知状況

<将来ビジョン>
 本学では、「建学の精神(人間教育の最高学府たれ、新しき大文化建設の揺籃たれ、人類の平和を守るフォートレスたれ)にもとづき、創立50周年の本学の大学像として、学長主導「創価大学グランドデザイン策定委員会」および「創価大学グランドデザイン推進室」により、「創価大学グランドデザイン」が発表された。「創価大学グランドデザイン」では、「創造的人間を育成し、社会に優れた人材を輩出すること」を将来ビジョンとして定めている。その中のディプロマ・ポリシーでは、知識基盤(幅広い知識と専門性)、実践的能力(知識を社会に応用する力とコミュニケーション力)、国際性(多様性の理解と協働性)、創造性(統合力と創造的思考力)の4つの力を有する人材を「創造的人間」と定義している。
<本事業の独自色の位置付け>
 本事業の独自色は、理系・文系の研究領域を融合することで、特色ある学際的領域分野として「プランクトン工学」を提案し、途上国における環境保全と飢餓解消に貢献する持続可能な循環型社会システムの構築を目指すことである。「プランクトン工学」とは、クロレラやスピルリナなどに代表されるプランクトンの自然界における機能を利用し、環境改善、バイオマス生産、有価物の製品・商品化、それらのバリューチェーンの構築、ビジネスモデルの提案などを通して人間社会を豊かにする新たな文理融合型の総合工学分野である。これらは、タイプBの「科学的・技術的・社会的・経済的意義があり、国際的な経済・社会の発展、科学技術の進展に寄与する」という趣旨に合致している。
 本事業を通し、本学学生は幅広い知識と専門性に立脚した知識基盤を学び、途上国で実践的な教育を受ける機会を得る。海外交流大学や国連との連携により国際性が養われ、途上国での新たな循環型社会システムの構築を経験する過程では柔軟な創造性が必要となる。したがって、本事業の取り組みは本学が目指す「創造的人間」の育成に直接的に繋がるものであり、本学の将来ビジョンの実現に向けた位置付けとなっている。
<周知状況>
 本学では、年に1回全学教職員を招集し、「創価大学事業計画説明会」を開催しており、「創価大学グランドデザイン」にもとづく創価大学教育ビジョンの取り組みについて紹介するとともに、意見交換の場を設けて、全学教職員に将来ビジョンを周知している。さらに、「創価大学グランドデザイン」の内容は、専用のホームページやパンフレットにより学内の学部生・大学院生・教職員はもとより、学外にも周知・公表されている。
 本ブランディング事業は、学長主導の研究支援組織である「研究推進センター」で検討され、大学理事会・大学教育研究評議会において審議・承認され、各学部・研究科の教授会・委員会における審議を経て、学内に周知徹底されている。

②本事業の対象

 本事業を実施する上で、直接的に本事業の実施に関わるステークホルダーとして、在学生(学部生・大学院生)、国連・NGOなどの国際機関、現地からの留学生、現地の若手技術者・研究者・起業家、現地の大学・研究機関、現地企業が想定される(図2)。この他に、本事業に二次的に関わるステークホルダーとして、受験生・保護者、日本国内の企業、日本国内の大学・研究機関が想定される。受験生・保護者については、ブランディング化のプロセスで実施予定の広報活動によって、本学の活動や特色が周知されることになる。日本国内の研究機関については、途上国において実施した技術開発の成果を学術学会や学術雑誌等に発表することで、本学の研究活動が周知される。日本国内の企業については、本事業実施中の広報活動や共同研究、また、本学からの途上国におけるBOPビジネスの提案、さらには本事業で実践的教育を受けた卒業生の就職などの複合的な効果によって、本学のブランドが浸透していくものと考えられる。

③本事業を通して浸透させたい大学のイメージ

<在学生・受験生・保護者、日本国内の企業>
 在学生は、本事業を通して実践的な国際教育を受けることで学問と実践の結び付きを考えるようになり、学生のアイデンティティ形成に寄与する。また、学部横断型の事業に参加することにより、自分の専門分野に留まらない柔軟性と知識を生かして課題を解決する応用性を養う。これらの在学生は、海外で働くことに興味を持ち、本学から多国籍企業や外資系企業、海外で活動する日本国内の企業、国連・NGOなどの国際機関へ人材を輩出することが期待される。その結果、在学生はもとより、二次的に受験生やその保護者にとっても本学が「国際社会で活躍する人材を育成する大学」として認識される。本事業で実施する実践的な国際教育を発信することで、国際協力に興味を持つ受験生が増加し、それに伴う競争による本学の受験生の学力向上や本学への多様な人材の参入が期待される。
 現在、多くの日本企業が「企業の社会的責任(CSR)」を果たすために、途上国での環境保全や飢餓解消に資する活動に関心が高い。このような状況の中で、途上国支援と継続的な利益創出を同時に達成するBOPビジネスモデルを日本企業に提案することは、本事業の果たすべき具体的な役割の一つである。この活動と、本事業期間中の広報活動、さらには本事業で実践的教育を受けた卒業生の就職などの複合的な効果によって、日本国内の企業においても「国際社会で活躍する人材を育成する大学」として本学のブランドが浸透させたい。
<国連・NGOなどの国際機関>
 本学は既に、「国連アカデミック・インパクト」への参画、「ソーシャルビジネスデザインコンテスト」の共催、「難民高等教育プログラム」協定の締結などを通して、国連の活動を支援し、強固な信頼関係を構築してきた。本事業では、国連SDGsに挙げられている環境保全・飢餓解消に全学を挙げて取り組むことで、国連・NGOなどの国際機関にとって、本学が「貧困層に対する人道支援を牽引する大学」として認識される。
<現地からの留学生、現地の若手技術者・研究者・起業家、現地研究機関、現地企業>
 途上国では、排泄物などの有機性廃棄物・廃水の処理体制の不整備に起因する環境汚染が問題となっている。しかし、廃棄物・廃水の中には多くの循環資源が潜在しており、それらを用いた新たな産業基盤の形成が期待されている。本事業では、廃棄物・廃水からの低コストなエネルギー回収や栄養塩の循環利用による有価物生産技術を研究開発する。さらに、有価物の高機能飼料化や健康補助食品の商品化などにより、ビジネスモデルの展開が期待できる。また、国連との現地ワークショップの共催や本学への留学生の受け入れによる環境教育・経済教育の実施により、環境保全意識の向上や本事業の内容を理解した研究者・技術者、地域経済の発展を担うアントレプレナーを育成する。このような活動を通して、現地からの留学生、現地の若手技術者・研究者・起業家、現地研究機関、現地企業にとって、本学が「途上国支援に力を入れている大学」として認知される。
<日本国内の大学・研究機関>
 本事業で得られる技術開発の成果を国内・国際学会や学術雑誌で発表することにより、創価大学の技術力のプレゼンスを高めることができる。日本国内の研究機関には、「途上国で利用可能な適正技術の研究開発やビジネスモデルの策定を得意とする特色ある大学」として浸透させたい。

④現状の大学のイメージ・認知度

 ブランドの評価を行う研究機関である「日経BPコンサルティング」は、2007年から年に1回「大学ブランドイメージ調査」を実施している。本調査は、本学を含む各地域の主な大学(全457校)を対象とし、49項目にわたって大学や学生へのブランド・イメージを中立的・多面的に収集したものである。現状の大学のイメージ・認知度に係る客観的な指標として、2016-2017年版のビジネスパーソンへの調査結果を用いる。なお、本学は東京都に位置することから、首都圏の国公私立120大学を対象とした調査結果を用いる。
(1)本学の認知度・ブランドイメージ
大学認知度:88.9(27位, 平均69.2)
大学ブランドイメージ:46.9(58位, 平均49.7)※前年調査では46.0(66位)
(2)主な調査項目(括弧内は前年調査)
 ① 広報活動に力を入れている:1位(7位)
 ② 個性的である:8位(35位)
 ③ ロゴ、カラー、キャラクターなどが思い浮かぶ:14位(46位)
 ④ 留学生の受け入れが活発である:15位(17位)
 ⑤ グローバル/国際交流が活発:18位(36位)
  以上の調査結果から、本学の認知度は首都圏の国公私立大学の中では上位に位置していると言える。大学ブランド・イメージは平均値をやや下回っているが、前年調査からは順位を上げており、これまでのブランディング活動による一定の効果が見られる。また、「主な調査項目」の結果から、①-③では本学の特徴やイメージ、④-⑤では留学生の受け入れや国際交流といったグローバルなイメージが浸透していることがわかる。

⑤情報発信手段・内容

 【④現状の大学のイメージ・認知度】の調査結果から、「大学の認知度が高い」という本学の強みを生かし、以下の様々な手段を用いて事業内容・成果を迅速かつ正確に発信することで、国内外の各ステークホルダーに【③本事業を通して浸透させたい大学のイメージ】で挙げた本学のイメージを浸透させる。
<全ステークホルダー>
ホームページ・SNS:既存の大学ホームページ・SNSとは別に、本事業専用の日本語・英語版のホームページ・SNS(Facebookなど)を開設し、情報を頻繁に更新することで、学内外の全ステークホルダーに事業内容・成果をリアルタイムで発信する。
広告新聞・雑誌・動画などのメディアを通して、学内外の全ステークホルダーに事業内容・成果を広く紹介する。
シンポジウム:最終年度に公開シンポジウムを開催し、学内外の全ステークホルダーに事業内容・成果の周知を行う。併せて、第三者評価を行う。
<在学生・受験生・保護者>
学内説明会・報告会:初年度に説明会を1度開催し、その後、年に1回の報告会を開催し、在学生に事業内容・成果の周知および本事業への参加募集を行う。
大学パンフレット・広報誌キャンパスガイドや大学広報誌「SUN」(年に4回)に事業内容・成果を掲載し、主に在学生・受験生・保護者に配布する。適宜、本事業に参加した学生・教員へのインタビューなどの特集記事を掲載する。
オープンキャンパス・進学説明会:本学キャンパスで開催されるオープンキャンパス(年に6回)や全国の外部会場・海外事務所(中国・韓国・タイ)で開催される進学相談会で受験生・保護者に本事業の紹介を行う。
<国連・NGOなどの国際機関、現地の若手技術者・研究者・起業家>
 現地説明会・セミナー:初年度に説明会を1度開催し、その後、年に1回のセミナーを開催し、現地の若手技術者・研究者・起業家に事業内容・成果の周知、本学への留学生募集などを行う。
<日本国内・現地の大学・研究機関・企業>
学会発表・研究紀要・論文国内・国際学会発表および研究紀要・学術雑誌への論文掲載を通して本事業で得られる技術やビジネスモデルに関する学術的成果を国内外の大学・研究機関・企業に発信する。
報告書中間報告書・最終報告書を作成・公開することで、事業内容・成果を発信する。
 本事業で取り組む課題は多様であるため、本事業期間のみでは完全な形での課題解決は困難である。したがって、本事業期間終了後も本事業の課題に取り組み続ける若い人材が必要であるため、本事業に賛同する若き協力者を集めるためのPR活動を特に強く実施する。また、文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援(タイプB,グローバル化牽引型)」の取り組みやコミュニケーション活動を通し、本学の強みや魅力が各ステークホルダーに伝わるよう努める。

⑥ブランディング戦略の具体的工程

 本事業では、効果的な情報配信を目的とする「伝える段階(手段)」本学の強みの明確化・他大学との差別化を図る「働きかける段階(手段)」に分けてブランディング戦略を策定し、各フェーズで各手段および全体でPDCAサイクルを回す。各年度ごとのブランディング戦略の詳細については、表1に示す。
<伝える段階(手段)>
 「研究推進センター」の「プロジェクト運営支援部会」がブランディング戦略を策定し(Plan)、「広報部会」、各学部・研究科が事業内容・成果に係る情報を配信する(Do)。具体的には、「広報部会」が本事業専用の日本語・英語版のホームページ・SNS(Facebookなど)を開設し、ホームページ・SNSに掲載する情報を頻繁に更新することで、学内外の全ステークホルダーに事業内容・成果をリアルタイムで発信する。新聞・動画などのメディアを通して、学内外の全ステークホルダーに事業内容・成果を広く紹介する。キャンパスガイドや大学広報誌「SUN」(年に4回)に事業内容・成果を掲載し、主に在学生・受験生・保護者に配布する。各学部・研究科は、国内・国際学会発表および研究紀要・学術雑誌への論文掲載、中間報告書・最終報告書の作成・公開を通して本事業で得られる学術的成果を主に国内外の大学・研究機関に発信する。これらの情報配信活動について、「プロジェクト運営支援部会」がホームページアクセス数、新聞記事の掲載数、論文掲載数などの成果指標をもとに情報の到達を年に2回評価し(Check)、それをもとに「伝える段階(手段)」のブランディング戦略を改善する(Act)
<働きかける段階(手段)>
 「研究推進センター」の「プロジェクト運営支援部会」がブランディング戦略を策定し(Plan)、「広報部会」、各学部・研究科が本事業のプロモーションを行う(Do)。具体的には、「広報部会」と各学部・研究科が連携して年に1回学内説明会・報告会を開催し、在学生に事業内容・成果の周知および本事業への参加募集を行う。また、本学キャンパスで開催されるオープンキャンパス(年に6回)や全国の外部会場・海外事務所(中国・韓国・タイ)で開催される進学相談会で受験生・保護者に本事業の紹介を行う。さらに、現地説明会・セミナーを年に1回開催し、国連・NGOなどの国際機関、現地の若手技術者・研究者・起業家向けに事業内容・成果の周知、本学への留学生募集を行う。各フェーズの終了時には公開シンポジウムを開催し、学内外の全ステークホルダーに事業内容・成果の周知を行う。これらのプロモーション活動について、「プロジェクト支援部会」がイメージ調査、認知度などの成果指標をもとに関心・共感の獲得を、寄付金・外部資金、報告会の参加者数などの成果指標をもとに協力・評価の獲得を評価し(Check)、それをもとに「働きかける段階(手段)」のブランディング戦略を改善する(Act)

⑦成果指標・達成目標

<伝える段階(手段)>
・ホームページアクセス数:初年度比20%増
・新聞記事掲載数:初年度比20%増
・SCOPUS論文執筆数:初年度比20%増
<働きかける段階(手段)>
・入学者の中に占める途上国支援や海外就職希望者数:初年度比20%増
・共同研究受託件数・金額:初年度比20%増
・寄付金件数・金額:初年度比20%増
・事業に係る認知度・イメージ調査(特に国際性評価の項目):初年度比20%増
・学内における事業認知度:初年度比20%増
・事業の第三者評価:5段階評価(A,B,C,D,E)のB以上

⑧達成目標の進捗状況の把握方法

 「研究推進センター」「広報部会」を事務局とし、各取り組みの達成に向けた進捗状況や成果を集約する。「広報部会」では、今後の方向性について定期的に協議し、計画に基づいてブランディング活動を進める。集約した進捗状況や成果は公式ホームページ等で積極的に公開する。具体的には、以下の方法により進捗状況を把握する。
<伝える段階(手段)>
・ホームページアクセス数:ホームページ管理者からの情報提供
・新聞記事掲載数:広報部会での定期的な確認
・SCOPUS論文執筆数:各年度末にデータベースSCOPUSを利用して調査
<働きかける段階(手段)>
・入学者の中に占める途上国支援や海外就職希望者数:入学時にアンケートを取る
・共同研究受託件数・金額:年度末に各学部・研究科で集計
・寄付金件数・金額:年度末に各学部・研究科で集計
・大学認知度・イメージ調査(特に国際性評価の項目):「日経BPコンサルティング」による「大学ブランドイメージ調査」の利用
・学内における事業認知度:全学アンケートの実施
・第三者評価:年1回の外部評価委員会による客観的評価
フェーズ 実施内容 目的 ステークホルダー 成果指標(達成目標)
毎年 オープンキャンパス・進学説明会
(事業説明、展示見学、模擬授業)
学外周知、受験者啓蒙 受験生、保護者 入学者の中に占める途上国支援や海外就職希望者数(初年度比20%増)
大学パンフレット・広報誌への掲載 学内周知、受験者啓蒙 在学生、受験生、保護者 大学認知度・イメージ調査(初年度比20%増)
学内における事業認知度(初年度比20%増)
毎年
(初年度を除く)
学内報告会の開催(年1回) 事業内容・成果の周知 在学生 学内における事業認知度(初年度比20%増)
学会発表、研究紀要・論文への投稿 学外周知、学術的貢献 研究機関、企業国連、NGO、NPO SCOPUS論文執筆数(初年度日20%増)
事業の第三者評価 事業内容の客観的評価 外部有識者 5段階評価(A,B,C,D,E)のB以上
フェーズ1
(1-3年目)
専用HP・SNS 情報発信 全て ホームページアクセス数(20%増)
学内説明会の開催 学内周知
本事業に参加する学生の募集
在学生 学内における事業認知度:初年度比20%増
入学者の中に占める途上国支援や海外就職希望者数(初年度比20%増)
途上国における現地説明会の開催 事業内容・成果の周知
留学生の募集
国連・NGO等の国際機関
現地の若手技術者・研究者・ 起業家
共同研究受託件数・金額(初年度比20%増)
寄付金件数・金額(初年度比20%増)
大学認知度・イメージ調査(初年度比20%増)
中間報告書の公開 事業内容・成果の周知 全て 事業の第三者評価:5段階評価(A,B,C,D,E)のB以上
フェーズ2
(4-5年目)
広告(新聞、動画など) 情報発信 全て ホームページアクセス数(初年度比20%増)
新聞記事掲載数(初年度比20%増)
大学認知度・イメージ調査(初年度比20%増)
途上国における現地セミナーの開催 途上国における人材育成 国連・NGO等の国際機関
現地の若手技術者・研究者・ 起業家
共同研究受託件数・金額(初年度比20%増)
寄付金件数・金額(初年度比20%増)
大学認知度・イメージ調査(初年度比20%増)
公開シンポジウムの開催 学外周知、事業成果の報告 全て 事業の第三者評価:5段階評価(A,B,C,D,E)のB以上
最終報告書の公開 事業内容・成果の周知 全て 事業の第三者評価:5段階評価(A,B,C,D,E)のB以上