創大Days

2023年04月04日

丹木の歳時記2023 卯月(一)

創大Days編集部

(前号から続く)そこで彼が見たものは前夜の卒寮コンパの宴の後。放置された食器や飲食物が散乱し、足の踏み場もない状態です。入寮式前には片付ける予定だったのでしょうが、寮の案内パンフとはかけ離れた光景に呆然とします。やがて戻ってきた残寮生(2年生)と一緒に後片付け。彼の寮生活は想定外のスタートとなりました。数日後の入学式に彼の両親の姿はありませんでした。経済苦で一度は進学を断念。入学金や授業料も分割払いで納めるのがやっとでした。所持金はすぐに底をつき、自動車工場で4月からアルバイトを始めます。3月31日の朝、滂沱の涙で見送る母の姿に後ろ髪を引かれる思いで故郷の駅を後にしました。創立者は入学式の祝辞の中で「今日、私が皆さんに一番お願いしたいことは」と言われました。「それは諸君の大事なお母さんを大切にして頂きたいということです」。その言葉を聞いた瞬間、彼の目からとめどなく涙が流れ落ちました。「この場に来たくても来られなかった母がいることも創立者は分かって下さっている」。40数年前のあの日、東京駅の一隅で先輩を待っていた不安げな彼に、本欄の筆者が言葉をかけるとしたらこうなるでしょう。「君の4年間の学生生活はよき友人、後輩や先輩に恵まれて間違いなく素晴らしいものになる。そしていつしか母校の自然に魅せられ、『丹木の歳時記』を綴り始める日が来るよ」。本年度の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
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ページ公開日:2023年04月04日


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