『学びを結果に変えるアウトプット大全』
通信教育部 講師 黄 國光
本書は、日本初のアウトプットに特化した決定版とも言える一冊であり、著者である精神科医が提供するアウトプットのノウハウが詰まっています。各項目は、見開き完結型でまとめられており、スキマ時間に手軽に読むことができます。なお、本稿では、本の要約サイト※)の一部を紹介していますが、詳細な内容については末尾に掲載されたサイトで、重要なポイントがわかりやすくまとめられていますので、ぜひ参考にしてください。
インプットは情報を「入れる」こと、アウトプットは入れた情報を「出す」ことを指します。本書によると、「読む」「聞く」がインプットに、「話す」「書く」「行動する」がアウトプットにあたります。ある調査によるとインプットとアウトプットの比率は7対3が平均だそうです。しかし、著者は、インプットとアウトプットの“黄金比”は3対7だと指摘します。そしてアウトプットなしに自己成長はありえないというのです。
例えば、本棚にある本を1冊取り出し、その内容を5分で説明してみましょう。もし説明できないとすれば、内容を覚えておらず、何の役にも立っていないということです。インプットはただの「自己満足」にすぎません。読書などでいくらインプットしても、アウトプットしなければ記憶として定着することはありません。「自己成長」はアウトプットの量にこそ比例します。
本書には、アウトプットの4つの基本法則を紹介しています。1つ目は、「2週間に3回使った情報は長期記憶される」です。インプットした情報は、何度も使わないとすぐに忘れてしまいます。脳に入力された情報は、「海馬」に仮保存されます。仮保存される期間は2~4週間です。その間何度も使われた情報は、「重要な情報」と判断され、「側頭葉」の長期記憶に移動します。そして、側頭葉に記憶された情報は、忘れにくくなります。
アウトプットの基本法則2は、「成長の螺旋階段」です。これは、自己成長におけるインプットとアウトプットの関係を表現した言葉です。成長するためには、インプットとアウトプットをどんどん繰り返す必要があります。だが、インプットとアウトプットは、同じ場所をぐるぐる回っているわけではありません。インプットとアウトプットをセットで行うことにより、螺旋階段を上るように少しずつ成長していきます。
作家の立花隆氏や脳科学者の茂木健一郎氏も、インプットとアウトプットのサイクルを回すことの重要性に言及しています。自己成長のためには、このサイクルがとにかく重要です。
アウトプットの基本法則3は、先にも触れた「インプットとアウトプットの黄金比は3:7」です。この比率でインプットとアウトプットを行うと最も効率的だということがわかっています。思うように成長しないのは、インプットが過剰になり、アウトプットが不足しているからです。黄金比を意識し、アウトプットを増やしていきましょう。
アウトプットの基本法則4は、「アウトプットの結果を見直し、次にいかす」です。インプットとアウトプットのサイクルを回すにあたり、絶対に欠かせないプロセスがあります。それは「フィードバック」だ。これは、アウトプットの結果を評価し、その結果を踏まえて次のインプットに修正を加えるという作業です。失敗した場合にはその原因を追究し、対策を講じましょう。成功したときには、その理由を考えてさらなる改善を求めます。そうすれば必ず成長がみられるというわけだ。アウトプットの回数や頻度を増やすこと、アウトプットの際にフィードバックを受けること、アウトプットを通じて新しい学びを発見することなどがあります。
さらに、本書では、日々の生活のなかでアウトプット力を高める7つのトレーニング法が紹介されます。ここでは、そのうちの1つ、「読書感想を書く」を紹介します。これは、通教生皆さんの学修スキルを伸ばしたい人におすすめのトレーニング法です。
読書感想を記すことのメリットは、「本の内容が定着する」「本の内容を深く理解できる」「本の内容が整理される」「文章力がアップする」「思考力がアップする」「自己洞察が進む」「飛躍的に自己成長できる」、の7つがあります。
読書感想のテンプレートは、「ビフォー」+「気づき」+「TO DO」です。「この本を読む前の私は〇〇でした」+「この本を読んで私は、○○について気づきました」+「今後、○○を実行していこうと思います」の3行で構成をまとめ、それに肉付けするとよい。このテンプレートを使えば、10分で論旨が明解な読書感想を書くことができるはずです。
ここで取り上げた内容の他にも、本書には「効果的なフィードバックの4つの方法」「15人と濃い関係をつくる」「笑顔の8つの効果」など、非常に興味深い内容がまとまっています。
本書は、通教生皆さんがアウトプットを通じて学修をより効果的に定着させるための具体的な方法やテクニックを紹介しており、実践的なアドバイスが多数含まれています。アウトプットを通じて学修効果を高めたい人にはおすすめの一冊です。本書を手に取り、アウトプットを実践して、自分の人生を能動的、積極的に変えてみてはどうでしょうか。
※ 本稿のまとめにあたり、以下のサイトを大いに参考にしました。
flier(フライヤー) https://www.flierinc.com
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