2022年より、文学部の科目である「比較文化Ⅰ」で、春期と秋期にオンデマンド・スクーリングを開講している。 この科目は表現文化メジャーのベーシック科目であり、日本語教員資格のための選択科目でもある。 文学部のディプロマポリシーの5番目「文化の多様性を尊重しつつ、世界市民として、生命の尊厳と平和を目指すことができる」と最も関連のある科目である。
「比較文化Ⅰ」では、まず、文化とは何かを学ぶ。文化の定義は無数にあると言ってよく、曖昧な定義も多いが、この科目で学ぶ内容に即した定義を提示している。 さらに、その文化を比較することがなぜ大事なのかについて、日本の身近な文化事例を取り上げて学ぶ。この科目の特徴は、文化について抽象的な内容を伝えるのではなく、常に具体的な事例、日常言語の使用、日常行動の中に文化が現れていることを示して、その背後にどのような価値観、人間観があるのかを学ぶ点にある。具体的な言動に現れるのが「見える文化」であり、その見える文化を生み出しているのが、その文化の人々がもつ価値観・人間観である「見えない文化」である。この「見えない文化」とは何かについて、多様な観点から学んでいく。
世界には多くの文化圏があるが、この授業で比較するのは、英語圏の文化である。グローバル化の進展で、英語は世界で最もよく用いられる言語となっている。 さらに、英語は日本では小学校から学んでいる言語であり、英語に関する基礎知識を多くの受講生はすでに持っている。文化の違いは言語に最もよく表れるので、比較する文化の言語の知識がある程度必要である。英国は20世紀の中頃まで、米国は20世紀後半に、政治、経済、軍事の分野で世界をリードして、英米の大衆文化・消費文化などを世界へと広げてきた。日本でも、第二次世界大戦以降、大量のアメリカ文化が流入している。このような状況から比較対象としては、身近な英語やその文化が適切であると考えている。
この授業では、授業内でディスカッションを随時行い、クラスメートとの意見交換を重視して、次のような学習プロセスで進めている。
教科書の内容理解+自分の体験 ⇒ 自分の考えを持つ ⇒ 他者との意見交換 ⇒ 自分の考え・行動を変える
ただ、オンデマンド授業では、「他者との意見交換」ができないために、多様な意見があることを学ぶことができないのが残念である。オンデマンド・スクーリングは、いつでもどこでも学習できるという利点があるが、事情が許すのであれば、対面(夏期)・リアルタイムスクーリング(秋期)での受講も考えてもらえればと思っている。
文化の違いが、言語やコミュニケーション活動にどのような形で現れるかを理解して、日英文化圏の人々の間で、文化による誤解が生じることや誤解の原因を認識することができ、誤解や文化摩擦にどのように対応するとよいのかを理解することがこの科目の到達目標である。 例えば、不幸にも失業したと相手から言われたときに、「それはお気の毒に」というつもりで、“I’m sorry for you.” ということが、相手には侮辱されているように受け取られてしまう可能性を理解して、 “That’s too bad.” や “I’m sorry to hear that.” と言うのがよいというようなことを理解するのが到達目標である。自立・自助努力(self-reliance)を重視するアメリカ人には、最初の言い方は、その人の弱さを強調しているように解釈されるからである。
受講生にとって、オンデマンド・スクーリングを完了するのに待ち受けている難関は、自動採点型の小テストをクリアすることであろう。各授業回の小テストに合格しないと次に進めない仕組みになっている。この科目では、100%できていないと合格にしていない。そのために、小テストの解答について、昨年は多くの質問や疑問が寄せられた。こちらのミスがあったりして、訂正するなどして、今年は十分に改善されている。質問も減っているが、今でもある質問は、正解を入力しているのに正解にならないという場合である。正解にならない理由の多くは解答の入力の仕方が間違っている場合である。英語で解答する場合には、英数半角か英語のフォントで入力することが『自立学習入門第3版』(p.183)で示されている。また、単語の前後や間に余分なスペースが入っている場合も不正解になる。コピペなどをしないで、スペースに注意して確実に解答を入力することをお勧めする。 カタカナで解答する場合には、語と語の間に中黒(・)を入れることなど入力の基本ができていなくて不正解になる場合もある。また、受講終了日が近づいてくると、焦りの気持ちから問題文の指示をきちんと読まないで解答してなぜ不正解なのかという質問もあった。オンデマンド・スクーリングはいつでも学べるという気持ちでいると、学び始めるのが遅くなり、小テストで慌てて解答して間違えるということもある。どうか時間に余裕をもって、理解できないところは何度も映像を見たり、教科書をじっくりと読んだりして取り組んでもらいたい。
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