「教員採用試験に向けての具体的取組」
教職キャリアセンター指導講師 小堂 十
最も強い者が生き残るのではなく、
最も賢い者が生き延びる訳でもない。
唯一生き残るのは、変化に対応できる者である。
It isn't the strongest of the species that survive,
nor the most intelligent but the ones most responsive to change.
これは、ダーウィンの有名な言葉です。私自身も多くの人と接してきた中で、「強さ」「賢さ」だけでなく、「しなやかさ」を兼ね備えた人は自分自身の人生の充実感を味わえているように感じます。
OECDのEducation 2030プロジェクトが2019年に提示した「ラーニングコンパス2030」には、学習者自身が手に持ったコンパスを活用しながら、「well-being 2030」という到達目標に向けて歩もうとする姿が描かれています。
「well-being(ウェルビーイング)」とは、直訳すると「幸福」「健康」という意味があり、幸福で肉体的、精神的、社会的すべてにおいて満たされた状態をいいいます。
子供たち一人一人のウェルビーイング確保をするためには「変革をもたらすコンピテンシー(資質・能力)」を獲得していくことが大切であり、これのサポートをするのが教師の役割であり、学習者と伴走者としての関係が常にテーマとなります。つまり、「学ぶ」「教える」の立場でなく、互いにアクティブラーナーとして、「学び続ける」ことが求められています。これは冒頭で述べたダーウィンの言葉と符号するように私には感じます。また、日々の仕事や学業の中で、自分自身のウェルビーイングを目指す通教教育学部生の姿に相通じるものがあります。
既にみなさんもご存知のように、本年度採用試験より一部地域では3年生での前倒し受験の実施が行われ、来年度はさらに多くの地域で前倒し受験が予定されています。それと同時に受験日程も地域によっては1ヶ月ほど早まり静岡県(静岡市・浜松市も含む)では5月11日、茨城県では5月12日に実施予定をしています。このような時代の変化に主体的に対応していくことは、私たちにとって、まさにウェルビーイング確保していくことになります。
早めのスタートが鍵 ~合格のための土台づくり~【1月~2月までの取組】
教員採用試験は「筆記試験」「論文」「面接」等を経て、受験者の適性を見て合否が判定されます。「筆記試験」は、過去問題に挑戦し自分の苦手分野を見きわめくり返し学ぶ計画的学びを進めていくことが最善の方法であり、これを地道に取り組むことが大切です。
しかし、「面接」「論文」等については、どんなことから手をつけていけばよいのか分からない方も多いのではないでしょうか。そこで、最初に取り組みたいのが「自己分析」です。
受験自治体によって、「エントリーシート」「面接票」と呼び方も違ったり、提出時期も違いがあったりしますが、今、「自己分析」をしておくことは、有効な受験対策となります。
それでは、早速「自己分析」として、以下の項目について考えてみましょう。
- なぜ教師をめざすのか?(目指すようになったきっかけ、教師としての使命感等)
- なぜその教科か?(選択した教科を通じて、どんな子供を育てていきたいか)
- 自分の長所・短所(自分自身の強みや弱みを自覚したうえで、自己の課題を考える)
- 教職に生かせる自分の性格(自分の性格から、教師としての素養を考えてみる)
- 今まで取り組んだこと(これまでの経験を、教師の仕事でいかにいかしていけそうか考える)
- 自治体志望の理由(自治体で求める教師像を理解した上で、志望動機を考える)
早速書いてみた「自己分析」はいかがだったでしょうか。ほとんどの人が浅い内容になっていませんか。そこで、大切なのが、一つ一つの項目の深掘りです。面接においては、面接官は受験生の言葉を受けて、詳細について質問することが考えられます。
その対策として、「個別エピソード」を振り返ってみましょう。例えば、「アルバイト」や「仕事」などの経験については、①活動を始めた動機・目標など ②失敗や苦労、そう乗り越えたか ③工夫したこと ④周囲からの声 ⑤活動から学んだこと ⑥教師の仕事にどう生かせそうか等の視点から考えてみましょう。
また、「自分の価値観」については、①好きな言葉とその理由 ②人と接するときに気を付けていること ③憤りを感じること ④嫌な行動をする人への対応等の視点から考えてみましょう。
「教師になりたい理由」「志望教科とのかかわり」については、自分自身の小中高の変遷をたどっていくことで整理できます。
「志望自治体との関わり」については、①自分自身のこれまでの自治体との関わり ②自治体の印象・魅力を整理した上で、志望自治体の③教育施策 ④求める教師像等をしっかり理解したうえで、考えを整理していくとよいでしょう。
この作業を終えたら、もう一度、最初に行った「自己分析」をしてみると、面接のイメージが膨らんでくるはずです。しかし、面接時間は限られています。長々と話せば、自分自身のすべてをPRできません。その対策として、自分の軸・核になる「キーワード」を考えておきましょう。
まずは「自己紹介」。そこから、教員採用試験の挑戦は始まります。
こどう つなし Kodo Tsunashi
教職キャリアセンター指導講師
[ 職 歴 ] 東京都小学校校長
[専門分野] 社会科、総合的な学習の時間、環境教育、放送教育
[担当科目] 教職概論、教職実践演習
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