『ごみ収集とまちづくり -清掃の現場から考える地方自治-』
通信教育部 教授 坂本 幹雄
奥付によると、著者は、大東文化大学法学部准教授。専門は地方自治、行政学、行政苦情救済。
目次は次の通りである。はじめに、第1章「大都市の清掃事業」、第2章「ごみ収集の現場」、第3章「行政改革と今後の清掃事業」、第4章「コロナと清掃行政」、第5章「感謝の手紙と清掃差別」、第6章「清掃現場と女性の活躍」、第7章「住民参加と協働による繁華街の美化」、第8章「事業系廃棄物と産業廃棄物業界のDX」、おわりに
帯には次のように記されている。
「ごみを収集すると人と排出する人/それぞれの「顔」が交差する時/見えたものとは―。/清掃現場の労働体験と参与観察を通して、「ごみ」をめぐる社会の今を映し出す。/著者のフィールドワークの集大成。
カバーの「内容紹介」を引用する。
「緊急事態宣言後、巣ごもり生活が続き大量のごみが毎日排出されている。エッセンシャル・ワーカーと称されるごみ収集に従事する人々への関心は一時集まったものの日ごとに薄れていき、私たちは日常に戻りつつある。/だが、ごみ収集とはさまざまなイシューを背景に持ち、共存と共生の示唆を含む、社会を照らし出す鏡でもある。/本書は、ごみ収集という清掃事業の奥深さを伝えるとともに、清掃事業を体系的に理解するための手がかりを提示する。コロナ禍での東京都北区における清掃労働体験、新宿二丁目での参与観察などを通し、現場で活躍している人々を活写し、同時に清掃行政、清掃差別の実態に迫る。また、女性の活躍、住民と行政の協働による繁華街の美化、さらには産業廃棄物業界の概要とそこで推進されているDXまでも視野を広げる。/「顔」のある人びとの場で共に歩き視線を同じにして追った、渾身の書。」
本書は『ごみ収集という仕事』(2018年、コモンズ)の続編である。私は、こちらの方を2年前に読んで、生活がほんの少し変わった。同書によって、本は大なり小なり人を変えるということが実感できた。ごみ袋を以前よりもしっかりと結ぶようになった。水切りを以前よりもしっかりとするようになった。収集カレンダーを以前よりも見るようになった。在宅率が高まり、収集時の清掃職員の方との遭遇率が増えた。以前にまったくしなかったわけではないが、収集時に遭遇したら、必ずお礼を言うようになった。「ありがとうございます」。「こんにちは」。次の収集先に向かいながら「失礼します」。「収集する人」は一部の人だが、だれもが「排出する人」である。そう思い、「自分にできることは何か」と以前よりもよく考えて行動するようになった。
ところで『ごみ収集という仕事』を知った本が、藤原辰史著『分解の哲学 腐敗と発酵をめぐる思考』(2019年、青土社)である。これは「変わったタイトルだな」と興味を持って読んだ。帯には次のように記されている。
「おもちゃに変身するゴミ、/土に還るロボット、葬送されるクジラ、/目に見えない微生物……/わたしたちが生きる世界は新品と廃棄物、生産と消費、生と死のあわいにある豊かさに満ち溢れている。/歴史学、文学、生態学から在野の実践知までを横断する、/〈食〉を思考するための新しい哲学。」
同書によって、本との出会いは、また新たな本との出会いを生むことが実感できた。
藤井 誠一郎 著
『ごみ収集とまちづくり -清掃の現場から考える地方自治-』
2021年、朝日新聞出版、264+10頁、本体1500円+税
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