自立学習入門講座60
「レポート課題の適切な理解と良いレポート作成のために」
レポート課題を的確に理解し、良いレポート作成するためのポイントについて解説したいと思います。第一に、『レポート課題解説』を読み、出題者の求めている課題の意味を正確に把握することです。また、同時に注意すべき点は、レポート課題が報告型レポートを求めているのか、それとも論証型レポートを求めているのかを把握することです。第二に、「チェックシート」の作成のためのポイントと効果的な活用法について説明します。最後に、「問いかけ」をしながらテキスト(教科書)を読み込んで、重要な情報を探り当てるスキルについて解説したいと思います。
まず『レポート課題解説』をしっかり読んで把握し、そこからヒントを得てレポート作成に反映させることが大事です。提出されるレポートの中には、『レポート課題解説』に全く目を通さずに書かれたものではないかと思われるものが少なからず存在します。そこには課題の出題者が、レポート作成に最も重要な情報を提供しており、何が書かれていなくてはならないかとプレビューいう“ゴール”が示されています。この“ゴール”も複数の場合もあり得るということを忘れないように。だから、例えば「川を渡るための方法」を書きなさいと要求されているのに、「山を登るための方法」を書いてしまっていては、正に頓珍漢なレポートになってしまうということが発生してしまうのです。
それでは『レポート課題解説』には何が書かれていて、何ゆえにその課題解説が重要なのでしょうか。大体3つに要約できるでしょう。それは、➀当該科目の中でのレポート課題の位置の確定、➁「キーワード」や関連する概念の意味を正確に理解すること、そして③どのように考察していけばよいのか、考察の種類・タイプについての見通しを付けることです。
➀の「当該科目の中での位置」についてですが、どんな課題も、その科目の中で重要な位置(あるいは意義)を有しています。4単位科目であれば、4つのレポートを提出しなくてはなりません。4つのレポート課題の一つ一つが当該科目を理解習得するための最も重要な要素であります。見方を変えれば、4つのレポートで合格することこそが、当該科目の最終評価(つまり試験)を受ける資格を得るということにもなるのです。つまり、最終試験を受験してから4つのレポート評価で合格すれば成績も付きますが、順番としては4つのレポート課題を合格して試験に臨むということが筋道です。さらにいえば、良いレポートを書くということが、当該科目を深く理解し、良い評価を受けるということになるのです。
➁については、「キーワード」を発見して理解することこそがレポート作成の胆(きも)であるということです。大学教育において、多くの学生さんにとって、日常生活では使われないような初めて見る単語や言葉が多く使われているかと思います。とくに専門用語に至っては、推測することも困難な用語が出てきたりします。そこで、今までの自身の知識や経験では対応できない専門用語などに対応し理解し、レポート作成につなげていくためには、当然、専門の辞書や資料等が必要になります。また、インターネット上の、様々な辞書機能を使うことも良いでしょう。
さらにその意味を深く理解するためには、その概念を理解しなくてはなりません。例えば経済学の中の消費者行動の説明文には「効用」という言葉が出てきます。経済学辞典で調べてみると、「満足の度合い」という説明が書いてあります。そうすると多くの学習者は、「満足に“度合い”なんてあるのか?」とか「“リンゴ1個とミカン4個が入った果物籠”と“リンゴ2個とミカン2個が入った果物籠”の満足の度合いが同じといえるのか?」などと考えてしまいます。この場合の前提として、リンゴ1個の値段を200円、ミカン1個の値段を100円とすれば、この2種類の籠の値段は同じとなるのです。値段が同じということは、2つの籠のいずれかを買っても、その「効用」(満足の度合い)は同じと、一応、見なすのです。もちろん、リンゴが大嫌いな人や、ミカンが大嫌いな人の場合は、この効用の理論は当てはまらないかもしれません。
しかし、この学問上あるいは一般論としての「効用の意味や概念」を理解することが経済学の基本原理を理解するということに繋がるのです。この「効用」というキーワードの概念を理解し受け入れることができなければ、経済学の学習はいつまでも始まりません。このように当該科目の深い理解のためには、キーワードの意味と概念の理解なくしてあり得ないということになるのです。だからこそ、単位を取得しようとする各科目について、新聞の関連記事や関連書籍などを読み込んでいく習慣をつけることが大事です。そのためにも、インターネット利用は大いに助けになるでしょう。
そして③の「どのように考察するか。考察の種類とタイプ」について考えてみます。ここで大事なことは、レポート課題が、内容の要約、定義・分類、詳細な説明、歴史的比較、地理的比較などを求める「報告型」のレポートを求めているのか、それとも、論拠(または根拠)とデータに基づいて執筆者の主張(結論)を導き出す「論証型」のレポートを求めているのかを認識すること大事です。そのうえで、考察の種類とおおよその見通しを付けていくということが大事です。その見極め方法として、課題の“最後の文の終わり方”に注目して考えてみましょう。
(A)報告型(論証の前段階)
(a-1) 「・・・ということを説明せよ。」の場合は、
⇒ テーマを理解したことを明示して説明します。この場合、与えられた命題、課題などを証明したり立証する必要はありません。
(a-2) 「・・・ということについて述べなさい。」の場合は、
⇒ 自分の主観を入れて書いてもよいし、入れないように書いても結構です。自由度が広く、取り組みやすい要求といえます。ただし、文中の図表、データや出所については正確さが求められる場合があります。
(B)論証型
「・・・を論じなさい」の場合は、
⇒ そのテーマや課題を理解した上で明確な根拠や理由をあげて推論し、執筆者の主張や結論を示しながら、自身の意見や主張を示すことです。大学レベルでも最高難度のレポート課題の例です。
(C)その他の注意点
⇒ 報告型、論証型にかかわらず、レポートに自分の体験や感想、情緒を書いてはいけません。また、パソコン上でのレポート作成が普通のこととなっていますが、くれぐれもコピーペースト(文章の切り貼り)の多用に注意することが大事です。引用するなら、引用先の情報(著書名、著者名、発行者、発行年度等)をしっかり明示することを忘れないようにすることです。
次に、上述した「1.レポート課題の適切な理解のため」を踏まえて、良いレポートを作成するために有効な「チェックシート」を作成する具体的な手順を考えてみます。第一に、何より大事なことは徹底的に熟読をするということです。教科書は、一回読んだだけで理解できるものではありません。理解できるまで何度も読み返すことは当然だという意識を持つことです。教科書を読む際に、色鉛筆や消せるボールペンでマークしながら読み進んでいく習慣を身に着けると、後のポイントの書き出しに有効です。
第二に、ポイント(大事な点)は何かということを書き出してみることです。書き出し方は、箇条書きでも、思うままに書き出しても結構です。とにかくポイントを書き出したら、以下の様にチェックシートを作成して、レポート作成に進んでみることです。
①「課題の問い」は何なのかを明確にする。 ⇒ 1枚の紙から始めてみましょう!
②そのためのキーワードやポイントを探し出す。
③キーワードの意味や関連する概念を探り当て明確にする。
④課題に対する解答を教科書や関連資料などから探り当てる。
⑤レポートの作成開始 ⇒ 5W1Hを確認し、書く事実が、一般的なものなのか、個人的な体験なのか、特殊な事実なのかを踏まえる。
⑥どのようなタイプの考察を求めた課題なのかを探る。
⇒定義や分類、例示、詳細な説明、歴史的あるいは地理的な比較、批判、演繹的推論、帰納的推論などを求めているか推察する。そのうえで、前述したような(A)の報告型のレポートが求められているのか、それとも(B)の論証型なのかを把握する。
⑦課題の対象となる教科書の範囲はどこからどこまでかを探る。
⑧教科書の対象範囲内で示された参考文献についての情報のチェック。
⇒利用可能な文献情報をリストアップする。
ここまで履修科目の単位取得に必須のレポート作成について説明してきました。再度、確認したいことは、単にレポートを作成して科目試験に合格し、単位を取得して大学卒業の称号を得るということだけが目的ではないということです。
大学で学ぶということは、真理の探究であり、自身の可能性の発見であり、学問を通じて視野と教養を広げ、結果として自身の未来をより良きものにするためです。さらに、学び続けることによって自他ともの幸福を実現できる自分自身になることだと思います。そのためのレポート作成であり、試験の合格であり、単位取得であり、大学卒業です。
レポート作成は、まさに通信教育の第一歩の作業とも言えます。だからこそ、面倒だと思うことがあっても頑張って頂きたいです。
以下の説明や行為が正しければ〇、間違っていれば×をつけなさい。
問1 教科書の理解できる範囲と、新聞やネット情報などの参考資料を組み合わせて書くと、効率的に良いレポートを作成できる。
問2 統計やデータ、または社会の動向等については、自身で最新のものを収集し、レポートに反映させることが大事である。
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《解答と解説》
問1 正解は×です。教科書は、大きなテーマを基に書かれています。著書名や副題がそれを表しています。序文から各章に続き、あとがきで終わることが通常です。ゆえに、各章の前後の章は、何らかの形で繋がっています。ゆえに関連すると思われる他の章にも目を通す必要があります。
問2 正解は〇です。とくに現在の社会や国々を研究対象にしている経済学や社会学などにおいては当然のことです。教科書に最新の統計やデータが書いていないことは普通のことでもあります。
(参考文献)
『自立学習入門』新訂第2版、吉川成司・平井康章編著、創価大学通信教育部、2019年4月1日、
『自立学習入門』第3版、平井康章編著、創価大学通信教育部、2022年3月1日
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