中央教育棟から創大門へ続く道(創大シルクロード)を下っていくと、左側に「創価教育の道」があります。道の中心部に「創価教育万代の碑」が設置されていて、その奥に春に爛漫の桜花を咲かせる「牧口桜・戸田桜・池田桜」が並んでいます。碑の台座には創立者の「碑文」が刻まれています。その冒頭にこう認められています。
「人は教育によりて人となる 人は教育によりて幸福を開く 人は教育によりて平和を創る 故に人間教育は最極の聖業にして 万代を照らしゆく不滅の光なり」
この「碑文」を拝するたびに胸が熱くなります。ここは私にとって「原点」の地。時折碑の前に立って、創立者への誓いを新たにしながら日々の教育実践をふり返っています。今回は、みなさんと「創価教育の道」を一緒に散策しながら語り合うような気持ちでこの原稿を書きたいと思います。
いよいよ全国各地で教員採用試験(以下「教採」)が始まります(原稿執筆時点)。受験するみなさんは今、どのような気持ちでしょうか。きっと、不安や焦り、緊張感でいっぱいのことと思います。仕事や家事、育児との両立、三立で時間がない中、必死に頑張っている方も多いでしょう。本当に頭が下がります。授業で、個人面談や対策講座等で一緒に学んだみなさんの顔が浮かんできます。そんなみなさんのために、私たち教職キャリアセンター指導講師一同、全力を挙げて応援する決意でいっぱいです。
専門科目、教職・一般教養、小論文、個人・集団面接、場面指導、模擬授業、集団討論などどれもとても大切です。それぞれにポイントがあり、そこを押さえた対策は欠かせません。また、一次・二次(あるいは三次)と、受験地によって試験内容もさまざまで、どこに力を入れるかどのような計画で準備を進めるかなど、見通しを持つのも大事。ぜひともたくさんの知識を吸収して、専門性を高め、人間性を磨き、合格を勝ち取っていただきたいです。
さて、ふと立ち止まって考えてみたいことがあります。それは、今、なんのために学んでいるのか、という一点です。「教採合格のため」、もちろんその通りですが、果たしてそれが真の目的でしょうか。なんのために教師を目指したのか、ここで一度それぞれの原点に返ってみたいと思います。私の体験を紹介します。
私は5期生として創価大学に学び、中学校と高校の社会科免許状を取得しました。大学4年時に受験した埼玉県中学校社会科教採は不合格。卒業後、玉川大学通信教育課程に編入し、小学校教員を目指して勉強が始まりました。同時に、県内の小学校で臨時的任用教員として勤めることになりました。
4月、喜びいっぱいのスタート。かわいい子供たちとの出会い。入学式・始業式が終わった時、健康診断を受けてくるようにとのことで早速受診しました。翌日の昼休みに校長室に呼ばれました。そして言われたのが「君は採用できない」。えっ、なぜ?狐につままれたようでした。理由は「弱度の色覚異常(色弱)があるから」とのこと。「君は教員になれないよ。どうする?」とも言われました。当時、色弱の人は小学校教員にはなれなかったのです。それでも玉川大学通教での勉強は続け、その夏、思い切って小学校教採を受験しました。一次二次と進みました。しかし、最終結果は不合格でした。最後の健康診断で「色弱」が理由で不合格となったのです。
生活するためには何か仕事をしないとと、ある大手スーパーに勤めることになりました。店長から「あんたは元気がいいなあ」ということで、店の入り口の青果部門に配属されました。そうして働きながら、今度は中学校社会科の教採を受験しようとしたところ、やはり社会科でも「色弱」は採用しないとのことがわかりました。その時“人生どん詰まった”と感じました。
毎日法被を着てスーパーの店頭に立って、「いらっしゃいませ!」と元気にお客様をお迎えしましたが、心は全然ハッピーではありませんでした。
創立者に「教育の道でお役に立ちます!」と誓って創大を卒業した自分です。断じて誓いを破るわけにはいかない、との強い思いがありました。そこで、信頼できる方に相談したところ、色弱でも採用される教科があるのではないかとのアドバイスを受けて早速調べてみました。すると、確かに該当する教科がいくつかあったのです。その中から選んだのが「国語科」でした。卒業2年目、中学校の臨時採用教員をしながら東洋大学通信教育部に編入、中学校国語科教員免許状取得を目指して教採を受験し、合格することができました。こうして中学校国語科の本採用教員としてスタートしたのです。
あの苦闘時代、先の見えない不安の中で強く思ったことがあります。それは、「今、なぜ自分はこれほどさまよっているのか、何か意味があるはずだ。そうか、今の苦労は自分を磨き鍛えるための試練に違いない。とすると教採を突破することが目的ではない。それはあくまで目標だ。目的は本物の人間教育者となって、創立者の『最後の事業』である教育の道でお応えすることだ!絶対に不可能を可能にしてみせる!」ということでした。
その決意に立った時、仕事も通教の勉強も教採対策も、眼前の困難や課題に深い意味を感じました。創立者への誓いを果たすとの原点が、不撓不屈の力を漲らせ自身の生命を熱く燃え上がらせてくれたのです。
早いものであれから40数年が経ちました。当時をふり返る時、あの経験があったからこそ今の自分があるのだと思います。(後年、小学校校長となってあの時の小学校を訪れる機会がありました。何十年かぶりに校長室に入った時、「私は勝った!」という熱い思いが込み上げてきました。なお、現在の教採に「色覚検査」はありません。)
1984年11月3日、晴天の下、「創価教育の道」の近くにあった当時のグランドで行われた「第十回創友会総会」の席上、創立者はこう御指導くださいました。
「人生はいつも十字路に立たされているようなものです。十字路に立って悩み迷ったときは、この母校で青春時代を飾った『創友魂』を原点として進んでいってほしい。人生の原点を持った人は強い。私の人生の師は戸田先生です。私にとって先生は、人生の原点です。」
私たちの真の目的、それは、創価の人間教育者となって創立者と共に「子どもの幸福を実現する」ことにあります。その使命を果たすために今の労苦があるのは間違いありません。時代は人間教育者を求めています。今こそ、私たちの出番です。
さあ、もう一度、自身の原点に返って、今日も学びに学びましょう!
くりもと けんいち Kenichi Kurimoto
教職キャリアセンター指導講師
[ 職 歴 ] 埼玉県小学校校長、中学校教諭(国語科)、ハンブルク日本人学校、市教育委員会指導主事
[専門分野] 国語科、道徳教育、国際理解教育
[担当科目] 教職概論、教職実践演習
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新しく学光ポータル「学修支援だより」が開設されました!
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